バブル景気が崩壊し、いろいろなものが安くなった。株も安くなったし、土地も安くなった。お酒も安くなったし、飲食店も安くなった。また、100円均一店やディスカウントショップ、カテゴリーキラーと呼ばれる安売り店の台頭で、多くの日用品や洋服が昔より安く手にはいるようになった。しかし、非常に身近にして、安くなるどころか高くなったものがある。それは、清涼飲料だ。
「清涼飲料」というのは、食品衛生法では「乳酸菌飲料、乳及び乳製品を除き、酒精分1容量パーセント未満を含有する飲料」と定義されている。つまり清涼飲料は、炭酸飲料・果汁飲料・コーヒー飲料・茶系飲料・ミネラルウォーター及び最近ハヤりのニアウォーターがこれに属すると考えればよい。
350ml缶飲料
10年ほど前には自販機で100円で売られていたものが、110円に値上げされ、今は120円である。しかも、これはコカコーラ社が値上げをしたのに他社が追随するというプライス・リーダーシップによってアッという間に業界全体に広がった。大手ではただ大塚製薬がポカリスエットを110円に据え置いているが、業界のカルテル体質は強い。
駅構内で売られている缶飲料
駅のホームの自販機等では、現在ではあまり見なくなった250ml缶が平然と売られている。この理由は想像するに難くない。おそらく鉄道会社への上納金が存在し、それでいて価格は据え置くようにという無理難題を言われているのだろう。その分、量を減らして対応するという飲料メーカーの苦心のあとが見て取れる。いずれにせよ、250mlで120円というのは非常に高い。
190g缶コーヒー
ショート缶と言われるタイプだが、こちらも驚きである。かつてはコーヒーだからといってサイズが小さいなどと言うことはなかった。250cc缶全盛時代にコーヒーも250cc缶であったのが、350cc缶全盛のこの時代に、なぜかコーヒーだけが小さくなってしまったのである。しかも、価格はかつてより値上げしたのにだ。コーヒーだからといってそれだけで小さくてよい理由があるとは思えないが(喫茶店で出されるアイスコーヒー一杯より少ないではないか)、業界は不思議なことに、今や「コーヒーは小さいのが当たり前」とでもいわんばかりの対応ではないか。
500mlペットボトル飲料
500mlペットボトルの高さはもはや異常である。一度空けてもまた閉められる手軽さが受けてのことだろうか、売れ行きは極めて好調のようだ。しかし店頭で140円、自販機で150円というのは高すぎる。
一方で、500ml紙パックは、コンビニエンスストアでも概ね100円で売られている。これは割安感がある。もっとも1リットル紙パックが200円前後だから、量も値段も半分で別にどうということはないのだが、やはり500mlペットボトルと比べてしまうのだ。大抵のコンビニでは500ml紙パックのレモンティが100円、500mlペットボトルのレモンティが140円で売られているが、どうして後者を買う人がいるのかは不思議でならない。500mlのペットボトル容器がボトルメーカーからの卸値で60〜70円するというから、ペットボトルは贅沢品なのである。
矛盾の価格設定
そこへ行くと、ロング缶と呼ばれる500ml缶が350mlと同じく120円で売られていることにはビックリさせられる。同じ自販機でさえ、500mlと350mlが同じ値段で売られているのだ。これはもうどう見ても自己崩壊している。
飲みきれないから350mlの方を買う人がいるんだし良いのだ、などと言ってはいけない。500ml缶を買う方のがどう考えても得なのだ。なぜなら、炭酸飲料は残りが少なくなると炭酸が抜けやすくなるし、そうでなくても、冷たい飲み物は残量が減ると温まりやすくなる。
たとえ350mlしか飲まないにしても、500ml缶を買って150mlを残して捨てる方のが理にかなっているのだ。私はいつもそうしている。
価格が逆転していないだけ、マクドナルドの朝のセットメニューよりはましなのだが……
500mlのカルピスウォーターも、500mlペットボトルが140円で売られている正に同じ店で500ml紙パックが110円で売られていることがある。これは、量を据え置いて価格が違うという別のパターンだが、もうこうなるとペットボトルは一体なんだか分からなくなってくる。私はこのことを知っているから、500mlペットボトルのカルピスウォーターしかない店ではカルピスウォーターを買う気がしない。
茶類
日本の飲料メーカーがお茶類でお金を取れることを覚えたのは、1981年にサントリーが烏龍茶を発売してからだろう。食堂・喫茶店でも飲み物といえば炭酸類とオレンジジュースしかなかったところに新たなそして最も頻繁に注文されるメニューが加えられたことになる。元来日本では水と安全とお茶はタダなものであり、飲食店において烏龍茶で金を取れるというのはすごいことなのだ。最近では緑茶(日本茶)を平気でメニューに書く店が出現してきた。良心的な店は、さすがに緑茶だけでお金はとれない、とばかり「日本茶和菓子付き」というけったいなメニューがある。
いずれにせよ、缶飲料においても緑茶が各メーカーから発売され、お茶が自販機で売られるのが当たり前になってしまった。最も滑稽な光景は、高速道路のパーキングエリアで自動給茶機があり、無料で緑茶やほうじ茶が提供されているかたわらで、メーカー製の缶の日本茶が平然と自販機に並べられているところだ。
ガソリンより高い水
ミネラルウォーターはもっと驚きだ。水はタダでなくなってしまったのである。しかし、ミネラルウォーターが有料で売られること自体は仕方のないことだ。不思議なのは、グラムあたりの価格が清涼飲料と変わらないことだ。これは驚くべきことだ。
ミネラルウォーターがいかに高いかは、水のクセしてガソリンより高いことからも分かる。ガソリンは1リットルあたり100円程度だが、このうち60%は税金である。深い穴ほって油田を開発して、中東からタンカーではるばる運んで、原油をガソリンに精製したものが、リッターあたりたったの40円なのに、ミネラルウォーターはただわき水を汲んできただけなのに1リッターあたり100円〜250円程度である。500mlペットボトルのミネラルウォーターが130円ぐらいで売られているから、税込みガソリンの2.5倍、課税前ガソリンの実に6倍である。
極めつけ・海底深層水
海底深層水に至っては1リットルあたり500円〜1000円にも及ぶ超高価格で売られており、もはや理解の域を超えている。深いところから汲み出すだけで高いのはおかしい。ガソリンだって深くから汲み出して1リッター課税前40円なのだから。