首相官邸で記者団に語った----そんな形で新聞やニュースには首相の談話が紹介されることが多い。テレビで見ていれば、何やら後ろにちょっと屏風っぽい壁に花が飾られたところで、ライトを当てられて首相は話している。
これは、首相官邸内にある、「立ち話で記者団に語るためのスペース」である。驚くべきことに、そのための壁が用意されており、首相はそこで、“記者団”の質問に答えてアドリブで談話しなくてはいけないのだ。
どうして私がこれを問題にするかというと、一国の元首としては余りにも軽々しい場であるからだ。単なる立ち話のレベルの首相と、定例会見を行なう官房長官を比べると、首相よりも官房長官の方がよっぽど偉そうだ。記者会見であれば、記者とも一定の距離があり、長官の威厳が感じられる。
一方で、首相は基本的に記者会見を行わない。国会での演説や答弁の他は、年頭の紋付姿の記者会見ぐらいではないだろうか。にもかかわらず、壁際の立ち話で記者に次々に質問され、答えなくてはならない首相は気の毒ですらある。あれでは、失言を引き出されるための場であるかのようだ。首相がいちいち、スポーツの結果やら、三面記事の事件に対して、コメントをしなくてはならないいわれはない。コメントをしたって構わないのだが、失言をとらえて失脚させるチャンスを虎視眈々と狙っている連中が山ほどいるのである。そのためのスペースと時間を、官邸として用意していることは、まったく合理性を感じない。一方でテレビの生出演や、記者会見に関しては、相当慎重で、殆どそれを行わないにもかかわらずである。
一国の元首が、記者にせっつかれて安っぽい談話を発表する必要など全くない。それが国民との距離を縮めることだと思っているなら、間違いだ。そんなことよりも、テレビ放送までしてホワイトハウスで米大統領が行うように、国民にしっかり語りかける演説を行うことの方が、よっぽど重要である。
記者クラブの権益が絡むのかもしれないが、早急に廃止するべきだろう。
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