結婚式における『三つの袋』(番外編)
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2007.10.20
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先日、友人の結婚披露宴でスピーチをする機会があり、何か参考になるものがないかとWebを検索したところ、『三つの袋』という、かなり定番のネタがあることを知った。
人生には、または結婚生活には、大切な三つの袋がある。一つは、給料袋。次に、堪忍袋。そして、おふくろ。お互いの親を大切にしなさい —— などという話である。この「袋」の種類には、「胃袋」「玉袋」などのバリエーションがあるらしい。
こういう定番の話を真顔でされたところで、多くの参列者は何度も聞いたことがあるのだろうし、うんざりされ、笑い者だろう —— と考えるのは尤もではあるが、必ずしも当たってはいないだろう。こんな話を単純に、「結婚生活には3つの袋があります。胃袋、給料袋、そして堪忍袋です」などと言ったって、話はすぐに終わってしまう。この話をどう味付けして膨らませ、面白く、そして感動的に仕上げるか。そこが腕の見せ所なのではないか。
ジャズで演奏されるスタンダードナンバーも、譜面(リード譜)を見てその通りに演奏したって、素っ気ない曲にしかならないものが多い。それを、リズムやメロディをフェイクし、コードをリハーモナイズし、アドリブを何コーラスも挟んで、オリジナリティのある音楽にしていくのである。
そう考えると、『三つの袋』は、かなり“料理”のしがいがある、自由度の高いネタだと言えるだろう。何よりも、『三つの袋』の「袋」そのものにバリエーションがあるのである。自分の好きな「袋」を選択し、自分なりの袋を見つけても良いのだ。笑いを多くしたいか、感動を多くしたいか、訓辞らしさを出したいかは自由である。
誰が語ったって同じ『三つの袋』になるのでは、決してない。これは殆ど噺家の領域であることが分かるだろう。古典落語は同じ演目であったとしても、誰がやっても同じというものではない。
そういうわけで、自分なりの『三つの袋』を構成し、面白く語れるようになれば一人前だと言えるだろう。そして、新郎・新婦のキャラクターによりその内容を変え、オリジナリティあふれる『三つの袋』を、披露宴ごとにやるのである。「今まで何度も聞いたネタではあるが、あの人が話した『三つの袋』が一番面白く聞けた」と言われるぐらいに創意工夫を凝らし、話術の限りを尽くしたいものである。
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実際の結婚披露宴の場では、別の招待客が『三つの袋』を仕込んでいる可能性も無視できない。自分の順番が最初でなければ、先に『三つの袋』をやられてしまった場合のために、別のネタも用意して行った方がよいであろう。あるいは、同じく『三つの袋』で応酬するという手もある。この場合、相手より下手であってはいけないが、相手の顔を潰してもいけない。非常に高度なワザを必要とすることとなろう。
逆に、まず自分が先に『三つの袋』を語ったら、普通は相手は別の話をするだろうが、万が一相手が『三つの袋』で応酬してきたときに、自分の評価の方が劣るようなことがあってはならない。相手が同じ『三つの袋』の話をする気がなくなるぐらい、完成度の高い『三つの袋』を披露しよう!
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愉快な『三つの袋』を思いついた人にはコメントに投稿してもらいたいが、ここでは、アイディアのいくつかを紹介する。
まずネットで見つけたものだが、「結婚には、三つの堪忍袋があります」と、いきなり間違えてしまうもの。後をどう続けて行くかがポイントとなるだろう。
運良く(?)直前のスピーチが『三つの袋』だったら、自分の番には「結婚には、実は袋は100個あります」とやって、「胃袋、給料袋、堪忍袋、おふくろ、紙袋、祝儀袋、香典袋、ビニール袋、ゴミ袋、池袋、ふとん圧縮袋、……」と続けざまに100個言い切って、勝ち誇ったような顔をして席に戻るのも良い。ただし、日々の練習なしには望めない。
もう一つのアイディアは、ほとんど最悪である。「木にとまってるのを見たことありますか? みみずくと良く間違えられます...あっ、それは、フクロじゃなくてフクロウか」「雑誌を買うと、本体よりこっちの方が楽しみでね...あっ、それはフクロじゃなくてフロクか」「目の下にあると、涙のように見えることがあります...あっ、それはホクロか」と、一人でぼける。だがうまく聞き手を巻き込むことができれば、つっこんでもらえるかもしれない。新郎や新婦につっこんでもらうのも良いだろう。
Tack'ns Entrance