東京メトロ副都心線の渋谷駅は、2面4線を有する地下駅である。東急東横線との直通運転が、来年までに予定されている。というよりも、この駅は実質的には、将来の東急東横線の渋谷駅であり、直通予定の副都心線が先に単独で利用していると言った方がよい。
← 3番線 池袋方面
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← (未使用)
← (未使用)
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← 4番線 池袋方面
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この駅には島式ホームが2つあるが、現在は2つのホームを図のように連結して1つの太い島式ホームとして利用している。ホームがあるのは地下5階だ。現在は副都心線の終着駅なので、電車が到着すると全ての乗客が降り、階段やエスカレーター等で上階へ移動することとなる。だが、ホーム幅の狭さ、階段やエスカレーターの狭さから、実にこの人の流れを捌けていないのである。
現在は2つのホームが連結されているので、列車が着くと乗客は、あふれる階段をさけて、もう一方のホームに移動し、そちらの階段やエレベーターも利用している。そうしていてもなお、階段は行列し、登りはじめるまでに1〜2分かかることが珍しくない。階段とホームの端(ホームドア)までのすき間は二人が歩くのがやっとの幅しかない。
なんでこんな狭いホームにしたのだろうか? ともう、あきれるばかりなのだが、用地の制約などがあって、難しかったのだろうことは想像がつく。私は東横線直通が開始すると、この駅は完全に破綻を来すのではないかと本気で心配しているのである。
東横線は、現在地上駅で頭端式ホーム4面4線となっている。この機能も、将来は現在の副都心線渋谷駅がになうのである。現在、この渋谷駅に池袋方面から到着する副都心線は、朝のラッシュアワーでも混んでいない。それでも降車客を捌けているとは言い難いのだ。これに東横線の利用者が加わるのである。そして、その時には2つのホームは分離され、現在のように「混んでるからもう一方のホームに回って階段・エレベーターを利用する」という方法は利用できなくなる。
何らかの楽観論に基づきこの狭いホーム設計で見切り発車した背景には、東横線の客はそのまま直通の副都心線に乗るから、それほど渋谷駅で降りない、という考えがあるのだろう。田園都市線と半蔵門線の直通経験からそう読んでいるのだろうが、私は、その数はそれほど多くないと思う。まずもって、副都心線は都心方面に向かう路線ではないので、都心に通勤する客には殆ど利用価値がない。
それでも、今まで山手線に乗り換えて新宿に行っていた人が、直通で副都心線で行くので……ということなのだろう。だが、果たしてこれがどれだけいるか? 悲観的にならざるを得ない。
【東横線から副都心線に直通で乗り続ける乗客が少ないこれだけの理由】
(1)旅客運賃の問題
副都心線を利用するより、渋谷→新宿をJRで移動する方が10円安いし、定期に至っては6ヶ月で1万円近く安い。
通勤交通費を負担する勤務先が、副都心線の定期代を支給するわけがない。ただし、これについては、JRに対抗して特別割引運賃を設定する可能性はあるだろう。
(2)新宿駅を通らない
副都心線が通るのは、あくまで新宿三丁目駅で、つながっているといえども新宿駅ではない。新宿三丁目駅がいかに新宿駅に至近だと言っても、それではカバーできない問題がある。
・「(東横線)−渋谷−(副都心線)−新宿−(JR線)」という利用は望めない。それなら、渋谷から山手線に乗り換えた方が、歩く距離は短く、運賃もメトロを挟まない分安くなるから。
・「(東横線)−渋谷−(副都心線)−新宿−(小田急・京王線)」も、望めない。新宿三丁目から小田急や京王へは距離があり、また渋谷→新宿の運賃がJRの方が安いため。
但し、渋谷駅での東横線(B5)→JR線(2F)の乗り換えが遠く不便なるので、上下移動を嫌う年配者などが、副都心線と丸ノ内線を乗り継いで新宿へ行くことはあり得る。
(3)就労人口の問題
・オフィスビルが集積する新宿駅西口方面には、東口側である新宿三丁目駅から通うには不便である。
・新宿はビジネスというより遊びの街で、新宿三丁目駅のある新宿東口側は特に、その傾向が強い。直通電車で新宿三丁目に遊びや買い物に行く人は、多いだろうけれども、この需要は朝のラッシュアワーには重ならない。朝ラッシュは大半の乗客が渋谷で都心方面の電車に乗り換えるだろう。
(4)池袋までの利用
・「(東横線)−渋谷−(副都心線)−池袋−(JR線)」という利用は望めない。それなら、渋谷から山手線に乗り換えた方が、運賃がメトロを挟まない分安くなるから。但し、JRの目的地如何によっては例外があるかも。
ものの本によれば、この2つのホームは、緩急接続可能な上下線として利用されるのではなく、片方は渋谷止まりの電車、もう片方は渋谷を通り抜けて直通する電車用に配線されているとのことであるので、付記しておく。
さて、実際どうなるだろうか。開業が楽しみである。