「新しい日本語を作る会」 否定形の廃止 | 2004.6.15 |
二重否定以外の否定形は、単なる肯定の打ち消しである。しかし、肯定を打ち消すということは一体どう言うことだろうか。
例:
「私はあなたを愛していない」
「私は動いていない」
こういった発言の意味するところは、結局何もしていないということであり、敢えて口に出して言うことではない。愛したり動いたりしたのなら、そのことを口に出す価値はあるが、否定形の文というのはそれ自体ナンセンスなのである。
ちなみに、もしどうしても何らかの事情で、例えば「動くなと言われたので、私は動いていない」というようなことを主張したければ、「私は止まっている」と、肯定形で表現するべきである。
同じように、形容詞の否定形も廃止する必要があるが、こちらは反対語の廃止(形容詞編)で述べたように、反対語の廃止に伴い必要になる場合がある。
例(おさらい):
「低い」→(改訂後)「高くない」
「やわらかい」→(改訂後)「かたくない」
形容詞は辞書順で後に出てくるものを廃止するため、結果として、対になる形容詞の辞書順で前に出てくるものにのみ、否定形を認めざるを得ない。
表現例 | 継続/廃止 | 理由 |
長い | 継続 | 否定形でなく、辞書順上位 |
短い | 廃止 | 対になる形容詞の辞書順下位は一律廃止 |
長くない | 継続 | 「短い」を廃止するため、「短い」に代えてこの語を使用 |
短くない | 廃止 | 否定形は原則廃止。そうでなくても「短い」という言葉自体が廃止。 |
例:
「後悔先に立たず」→(廃止)
「立つ鳥跡を濁さず」→(廃止)
Q
どうして形容詞では否定形を用いてまで反対語を廃止するのに、動詞では逆に反対語を使ってまで否定形を廃止するのか。
A
形容詞では、「低い」という言葉を廃止しても、「低い」という意味を伝える必要はある。一方で動詞は、「動いていない」という場合は、発言自体の必要がないのである。反対語を使うのは、どうしても表現したいという稀なケースである。
Q
どんな動詞にでも反対語があるわけではない。反対語のない動詞の否定形を使いたいときはどうしたらいいのか。例えば、医師に「便が出ない」と伝えるときはどうか。
A
反対語のない動詞の否定形は、発言自体がナンセンスで、沈黙を以て代用するべきだ。だが、どうしても表現する必要がある場合は英語の利用を認める。
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