最近テレビといえばワイドテレビが売れているが、あれはどうだろうか。
ハイビジョンは、構想自体は「良い悪い」の判断は抜きにして、避けて通れないものである。このような変革はいつかやらなければ、テクノロジーの進歩と関わりなく、千年の後にも現在と同じ解像度のテレビを見ていなくてはならない。しかも画面の解像度が細かくなることは、無条件に「善」であるとしてよい類の変化である。つまり画面を細かくするのはいずれはやることであるし、大いに結構なのである。
問題は、形だ。ハイビジョンでは、画面が横長になる。おそらく高解像度になっただけでは消費者に変化が分かりにくく浸透しにくいと考え、画面の形状の変更も仕様の一部としたのだろう。
この形の変化は私には到底許せない。つまり、これが理由にハイビジョンは当分の間買わないだろう。ましてや低解像度のまま横長になるワイドテレビなど論外だ。
第一に、気にくわないのは普通のテレビを横に広げたのがワイドテレビであるかのような宣伝をしていることだ。多くの人が感づいているように、あのような広告はまやかしだ。ワイド型テレビ市場が成熟すれば今度はワイドテレビを縦に広げたかのように宣伝しながら現在のテレビと同じ様な形の規格を作り上げるだろう。テレビを縦長にしたり横長にしたりの繰り返しで需要を促進されては困る。
この話はパノラマ写真とあながち無縁ではない。パノラマ写真は横長にプリントされるだけでは意味がなく、その分だけ広角になっていなくてはならない。ところが、私の所有しているオリンパスのカメラは、「パノラマモード」にすると、なるほど視野が横長になるのだが、それは明らかに通常モードの上下を切り落とした形でしかなく、撮影される範囲は返って狭くなってしまうのだ。
テレビに話を戻すと、何といっても実用上気に入らないのは、ワイド型テレビはスペースをとりすぎるということである。同じ面積の画面なら、ワイド型の方が設置スペースは多く必要となる。省スペース志向には到底受け入れられない、重大な欠点である。
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