テレビを見ていて何といっても腹が立つのは、出演者が一般人のゲストや、時に観客までをバカにして笑いをとろうとしている瞬間である。

　バラエティ番組ではよく視聴者をゲストに募集して何かネタをやらせるということをする。このようなシチュエーションでは、司会のタレントは、まるで出場者が「ヘンな奴」であることを期待しているかのようだ。ひどい場合ほとんど本題に触れずに、ただその出場者をこき下ろして笑いをとることに専念していることさえある。そういうとき私はほとんど情けなくなってチャンネルを変えてしまう。

　テレビ局で仕事をしている人の中には、自分たちがテレビ業界以外の人よりもエラいと考えていると思われるふしがある。インタビュアーにもしばしばこの傾向が見られる。

　もっとも簡単で技術を要しない笑いの取り方の一つは、誰かをピエロに仕立て上げていじめる方法だ。そう考えると、バラエティ番組に出場してくる視聴者は確かに変わり種が多いが、もともとテレビに出ようと考えるくらいだから変わっているのは仕方がないとしても、なお私はそこに作為を見いださずにはいられない。つまり、オーディションの段階で、番組中でタレントが笑いをとるためにピエロにしやすそうな人を選ぶ、という観点があるに違いないのだ。

　いずれにせよ、彼らには自分より弱い立場のものをからかって笑いをとろうとする姿が、他人から見て非常にみっともないということが分かっていないのだろう。たまには笑いのネタにからかわれた瞬間にスパッと反撃できるような視聴者が出場して、私をスカッとさせてくれないものだろうか。