吉野家、牛肉使わぬ新メニューを公開
吉野家にとってのカミカゼか。
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2004.1.9
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吉野家、牛肉使わぬ新メニューを公開
牛丼チェーン最大手の吉野家ディー・アンド・シーは、今月から本格販売する牛肉を使わない新メニューを報道陣に公開した。米国でのBSEの発生に伴う米国産牛肉の輸入禁止が続いているため、従来の「牛丼単品」戦略を転換した。約1カ月分の在庫が切れた場合、牛丼メニューは中止する方針だ。
在庫がなくなるまで牛丼の販売をし続けることは、それほど当たり前のことではない。私は狂牛病に対する小売店の対応も消費者の対応もややヒステリックで過剰反応だと思っている。しかし、その流れからすれば、吉野家は在庫のアメリカ牛を全て廃棄するという選択肢も当然、あるのだ。事実、大手スーパーなどでは店頭から一掃し、マクドナルドはフランクバーガーを中止しただけでなく揚げ油まで植物性に切り替えるという念の入りようだ。農水省は今回の一件で、米国産牛肉の一時輸入禁止だけでなく、国内に流通してしまった米国産牛の販売禁止と買い取りを行うべきなのではないか。国内で狂牛病が発生したときには国産牛を買い取る措置を講じたのだから、今回もそれに準ずるのが自然に思える。
しかし吉野家の米国産牛に対する強いこだわりも今回初めて分かった。米国産のコーンで育てた牛のバラ肉でないと、あのおいしさが出せないというのだ。平成の米騒動と言われた1994年の米不足の時は、外米とのブレンド米の牛丼を売っていた。これはかなりおいしくないものだった。これに比べれば、オーストラリア牛で作った牛丼の方が、ずっとマシに違いない。多少味が落ちるのなら、メニュー名を変えて「オージー丼」とか言って、「今しか食べれないメニュー」の触れ込みで売り出せば良いのだ。私は、「今しか食べれない」と思って当時ブレンド米の牛丼を食べに行ったものだ。メニュー名を変えれば、多少味が落ちていたとしても「いずれ元の味に戻ります」ということをアピールできるから良いだろうと思う。
しかし、むしろ今回の狂牛病騒動は、吉野家にとってはカミカゼに近いかも知れないと思う側面もある。牛丼業界は勝手に価格競争をして値崩れし、280円という異常な安さで牛丼を販売していた。なかでも吉野家は親子丼やうどんなどを出さず牛丼にこだわっていたので、客単価は低迷を極めていただろう。これが今回の「カミカゼ」によって、牛丼以外にメニューを多様化するという「こだわりからの脱却」と、カレー丼でも牛丼より100円以上高い「事実上の大幅値上げ」をやってのけ、おまけに同情までもらえるかもしれないのだ。
国産牛肉買い取り制度
国産牛に対する狂牛病の全頭検査以前に解体処理された国産牛肉は、消費者の不安を払しょくできないため市場に出すことができず、全農など団体が買い上げ焼却処分することとし、買い上げや焼却費用は国が全額負担した。
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