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金属線(銅線,導線,メタル)よりも光ファイバーによる光通信の方が“速い”という根強い誤解がありますが、そうではありません。光ファイバーは一般に銅線に比べて大容量かもしれませんが、本質的に伝達速度を速くするものではありません。
そういう意味では、自動車とトラックにたとえると良いかもしれません。トウモロコシ10トンを1台の自動車で運ぶには何十往復もしなければならず時間がかかりますが、2トントラックなら5往復ですみ、“早く”運び終えることができます。同じように、転送したいデータの容量が多くても光ファイバーなら短い時間で済み、銅線なら長い時間がかかります。
従って、光ファイバーの通信は「大容量である」と表現するべきもので、「速い」と表現するべきものではありません。
電気が伝わるスピードと光が伝わるスピードは同じです。1秒間に地球を7周半できるという、あれです。ですから、電気で通信しても光で通信しても、ある信号が宛先に到着するスピードは、秒速30万キロなのです。
しかし、光ファイバーは理論的に秒速30万キロで情報を伝達できるものではありません。それは、光ファイバーの仕組みに秘密があります。光ファイバーは、内側が鏡のように反射できる管にたとえることができます。図のようにして、曲がりくねったファイバーの中を、本来は直進する光線が反射を繰り返して先へと進んでいくのです。
光と電気の伝わるスピードは一緒ですが、100m光ファイバーの中を光線が伝わるとき、光線は100mよりも長い距離を行くことになります。ですから、信号が相手先に伝わるまでの「時間」で言っても、光ファイバーよりは銅線の方が“早い”ことになります。
一秒間に何回の信号を通せるか、という意味において、光ファイバーは銅線に勝っていることになります。したがって、光ファイバーは「早く」もなければ「速く」もなくて、「大容量である」というに過ぎないのです。メタファーを好むなら、「太い」という表現が最も的確でしょう。