「役不足」という言葉ほど誤って使用されやすい言葉も珍しい。ただ誤っているだけなら良いのだが、「役不足」の場合、正反対の意味に使われるから始末が悪いのだ。そして、その場合往々にして非常に失礼なことになりやすい。
「役不足」というのは、役者に対して役が不足であることを指す言葉である。つまり、与えられた役目が軽すぎることを表すのだ。あなたが上司に重要な任務を命ぜられたときに「役不足とは思いますが頑張ります」などとは決して言ってはならない。それは謙遜どころではなく、任務が自分にとって不当に軽いものである不満を表していることになる。
もしあなたが「役不足」という言葉を間違って使っていたなら、今度からは「力不足」「経験不足」などの言葉に置き換えるべきだ。そして、「役不足」の正しい用法を知ったあなたは、明日からたびたび周りの人が誤った使い方をしているのを耳にするだろう。そんなとき、面と向かって注意しては角が立つ。分別のある大人は言葉遣いの間違いなどいちいち指摘しないものだ。もしあなたにいくばくかの親切心があるなら、辞書の該当ページをコピーして赤線を引き、匿名で彼の家に送りつけてあげればよい。
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