(ある講演会の質疑応答の時間に、聴衆の一人がT氏に質問し、T氏が回答した)
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先ほどから先生がおっしゃってる「都心」というのは、具体的にはどの辺りを指すのでしょうか。山手線の内側を指すのでしょうか。それとも、「都心三区(千代田・中央・港)」や「都心五区(千代田・中央・港・新宿・渋谷)」を指すのでしょうか。
東京の都心部というのが、やたらと広い範囲を指すようになってきてますね。私にしてみればちゃんちゃらおかしい。都心という言葉が明確な範囲を限定するようなものでないことももっとも。時代と共に変わることももっとも。
でも、山手線の内側が都心だとする馬鹿馬鹿しい考えには到底ついていけない。銀座や日本橋を何だと思っているのか。それに山手線の内側で中央線より北側は、都心なんかじゃない。
新宿もぜんぜん都心じゃない。新都心だ。新都心と都心は古都と新都の関係ではない。大阪と新大阪の関係である。新都心という言葉自体が、都心ではないことを明確に表している。だれが「さいたま新都心」を都心だと思うのですか? 誰が「臨海副都心」を都心だと思うのですか?
恵比寿ガーデンプレイスができたときに、都心にオープンした再開発地という評価があったが、冗談じゃない。恵比寿は都心じゃない。どこが都心だというのだ? どちらかというと、独立した生活圏だ。
都心三区という言い方がある。この三区に含まれる地域が全部都心だなどということは到底ない。芝浦や高輪が都心だというのですか? そうではないでしょう。だが、この三区に含まれない地域は、都心ではなかろう。
都心であると言って誰もが反対しない、最大公約数の都心。それが、本当の都心である。丸の内、大手町、銀座、京橋、日本橋、八重洲、有楽町、内幸町、霞ヶ関、永田町・新橋・虎ノ門。広げてもせいぜい、赤坂・六本木。このぐらいに限定して、都心という言葉を使っていただきたい。