平成9年より、近距離でもタクシーを利用しやすくしようと、東京に鳴り物入りで登場した340円タクシー。初乗り1kmまでは340円で、2キロを超えると、その他のタクシーと同じ料金になる。
しかし、このタクシーを近頃とんと見かけなくなったと感じるのは私だけだろうか? そもそも(都会では)タクシーはたまたま来たものを拾うのだから、340円だろうが660円だろうが、選択する余地がないではないか----ということは元もと囁かれていた。
偉大なるエムケイタクシーは他社より1割安い料金で営業しているが、何も顧客がエムケイだけを選択して乗れるわけではない。電話により配車してもらうときにはエムケイにかければよいが、流しのタクシーを拾う場合にはエムケイが来るのを待つのも大変である。タクシー乗り場で行列しているときに至っては、自分の順番でたまたま来たタクシーに乗るより他にない。
本気で340円タクシーを普及させようと思うなら、「340円タクシーだけ止まる手のあげ方」というのを決めて、一緒に普及させるべきだっただろう。エムケイを見分けるのはタクシーの上に乗っているぼんぼりを見れば前方からでも可能だが、340円タクシーを見分けるには側面の表示を見るしかないから、見分けたときには通り過ぎてしまうのだ。しかし、
例えば、手をグーに握って挙手をしたときには340円タクシー以外は止まらない。そういうルールを作れば、利用者だってもう少し340円タクシーを進んで選択しただろうと思えるのだ。
ここに、業界がいかに、340円タクシーに消極的であったかが見て取れる。規制緩和と共に一応お祭り騒ぎをして、結果として
「顧客は値下げをしてもタクシーに乗らないのだ」という結論を示すための、茶番だったのではないかとさえ疑われる。
実は、同じような問題は前から存在している。それは、中型タクシーと小型タクシーの区分である。小型タクシーは23区内で、初乗りで20円安い。大きなタクシー乗り場だと中型乗り場と小型乗り場が別れていて、利用者が小型を選択することができる。が、流しのタクシーでは意図的に小型を選択するのはまず難しい。
これも本来であれば、「小型タクシーだけが止まる手のあげ方」が存在するべきなのだ。大体の利用において、タクシーなんて小型で十分であり、むしろ全てのタクシーが小型であってもいいくらいだ。しかし、タクシー会社とすれば売上を上げたいから、同じく運転手を一人張り付けることを考えれば、小型タクシーを営業するなどバカバカしいもいいところなのだろう。それが証拠に、個人タクシーで小型など見たことがない。タクシー会社は当局の指導で一定量の小型タクシーを入れさせられるのだろうか?
とにかく、利用者が、つまり市場が、全く望んでいなくても、小型タクシーは普及せずに中型タクシーがあふれる。これは、エネルギー問題や排ガス問題から見ても、実に嘆かわしいことである。市場の要請が形にならないために、今日もムダに中型タクシーが排ガスをまき散らしながら町を走るのである。
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