コンビニエンスストアーやファーストフードのレジスターには、マーケティングのために、客の年齢や性別を入力するためのボタンがある。要は、店員が客の風貌から年齢と性別を（あるいは時として職業も）推測し、ボタンを押すのである。チェーン本部ではこういったデータを収集して、どのような客層がどういった時間に訪れ何を買っていくのかを分析し、販売戦略に活用するのだ。

　私は兼ねてから不思議なのだが、いや、爆笑なのだが、といった方が適切だろう。世間にはときどき、見ただけでは男か女か分からない人がいる。だが、年齢はそうはいかない。通常において年齢は実際より若く見せようとするのが常だろう。それも、20代後半を回った女性であれば、ほとんどそれは確実だ。そう努力するにも関わらず、若く見てもらえないこと、年相応に見られてしまうこと、実際より年上に見られてしまうということこそが問題なのだ。美容という分野の目的はその半分以上が、「年を取っても若く見られること」だと言っても過言ではなかろう。

　従って、人は大抵、自分が何歳ぐらいに見られるかと言うことに関心を払っているし、ほとんどの場合、それは実際より若く見られることが望ましいと言える。それが分かっているからこそ、親しい間柄でもないのに年齢を問うことは、しばしば「失礼な行為」としてはっきり非難の目で見られるのだ。それを、顧客という大切な存在に対して、しかも自己の都合で、ぬけぬけとやり続けているコンビニエンスストアーのレジは不愉快きわまりない。

　私がなぜこれを腹の立つこととして取り上げて憤りを顕わにするかというと、この「性別年齢ボタンを押す」という行為を、ちっとも顧客に隠そうとしてないからである。どこの店だって、訪れた客の悪口を後でこそこそ言うことはあるだろうし、そういうのは店の勝手である。しかしコンビニのレジの年齢性別ボタンはあまりにも露骨なのだ。「そんなもの、いちいち見る方がおかしい」と言いたいかもしれないが、一度分かってしまうと次からはかなり気になる存在だ。まずコンビニの平べったいレジは、客の位置から全てのボタンが見える。そして、ボタン配置は私が見るにどのチェーンも大体以下のようになっており、ほぼ間違いなくブルーとピンクの帯が見える。ブルーのボタンは男性で、年齢を表す数字が大きく書かれている。上の方が若く、下の方が年寄りだ。ピンクのボタンは女性を意味する。このブルーとピンクの縞はあまりにも目立ち、気がつかない方がおかしい。ハッキリ言って、バカでも分かるほど露骨なのである。


　そして店員がこのボタンを押すタイミングが、また良くないなのだ。お金をレジにしまい、お釣りを取り出す直前の瞬間に押すのである！　それがなぜ良くないのか？　コンビニでのやりとりというのは、キャッチボールのように、一方で客が忙しい間には、店員がヒマであり、逆もまた然りだ。時間軸に従って書くとこんな感じになる。

客の作業	店員の作業
忙しい エッチラと重たいカゴをカウンターにのせる。	ヒマ 何もしていない。
↓	↓
ヒマ この間に、レジを覗いて、ボタンの位置を確認する。チェーンによって年齢の区分が違う。	忙しい。 カゴから商品を取り出しバーコードで読みとる。
↓	↓
忙しい 財布からお金、とりわけ小銭を取り出す。	ヒマ 客が小銭を取り出すのをイライラしながら待つ。
↓	↓
ヒマ お釣りをもらうのを待ちながら、問題のボタンを押す瞬間を見逃さない。	忙しい 客が出した額と年齢性別のボタンをレジに打ち込み、お釣りを取り出す。
↓	↓
忙しい 財布にお釣りとレシートをしまう。	ヒマ 早く次の客を処理したいので、その客がどくのを待つ。

　従って、客としては一番ヒマな時間に、しかも説明したとおりの露骨なボタンを店員が押すのが、ごく自然に目に入ってきてしまう！

　私は過去何度も年齢ランクが一つ上のボタンを押され、そのたび毎によっぽど文句を言おうかと思った……老けた髪型にカットした美容院にだ（笑）。コンビニの店員に文句を言っても、「これはお客様の年齢を表すボタンではなく商品コードです」とでも言われてシラを切られればそれまでだろう。しかし、不愉快きわまりないので、良く年齢ランクが上のボタンを押すコンビニからは、どうしても自然と足が遠のく。私の家から至近のセブン・イレブンとスリーエフは、このような理由から、最近では二ヶ月に一回も行かないくらいになり、努めてスーパーで買い物をするようにしまった。

　客にしてみれば自分が調査の対象にされているだけでも、データを取られているだけでも不愉快なのだ。上の表でも明らかであるが、例えば客が釣り銭をしまうタイミングで年齢性別ボタンを押すとか、そういった工夫をするだけでもだいぶこの不快感は和らぐであろう。

　それに、私にしてみれば、このようなボタンが暗号で示され分からないように配置してあるか、見えない位置に置くなど、なぜそれくらいの配慮ができないのか分からない。これが、私が最近コンビニに行かない理由である。