本当の一流店なら、そんなことはないのだ。だが、多くの店は、最初に決めさせたがる。食後の飲み物を何にするかだ。
食後に何が飲みたくなるかを今考えろと言っても、それはどだい無理な話じゃないのか? コーヒーと紅茶ならまだしも、ホットとアイスとなると、食後に暑くなるか寒くなるかまでを予想しなくてはならない。食事することによって体が熱を発し、最初の決断に反してアイスが飲みたくなることは良くあることだ。食事することによって満腹になり、アイスよりも少量のホットの方が欲しくなるのもまた良くあることだ。
最初に注文を取る時に飲み物の種類を決めさせることが、どれほどコストダウンになるのは疑問だ。皿を下げに来てから聞いた方が、むしろ間違えが少なくなるようにさえ思える。
これは、コストダウンやオペレーション上の都合など店の事情でそのようにしているというよりは、単にそういう習慣になってしまっているだけなのではないか。現状では、飲み物がセットになっている場合に、最初に「お飲み物は何になさいますか」を聞かないと、まるで店員が忘れているかのような印象を与えかねない。そして、「お飲み物はいつお持ちしますか」という質問が存在しうるから、また話がややこしい。一流店では「コーヒーを最初にお持ちしますか?」などという馬鹿げたことは聞かないから、フローが異なるのだろう。一流店云々よりは、選択肢にアイスがあるか、ウーロン茶があるか、などということが相違点なのかも知れない。
合理的な聞き方とは次のようなものだ。
(1) 「飲み物は、いつお持ちしますか」と聞く。
(2) (食前と答えた場合)「何になさいますか」と聞く。
(食後と答えた場合)「では後ほど伺います」と告げる。
(3) (食後と答えた場合、食事の皿を下げる段階で)「食後のお飲み物は何になさいますか」と聞く。
だが、こんなフローであると、客は戸惑う可能性が高い。最初に(1)の質問をされて、「えっ?」という感じるだろうからだ。だが、多分本当は、この方がお互いのためなのだ。習慣として、このように変わっていくことを望む。どこかの先進的なチェーン店が、「当店ではこのような順序で聞きます」ということをナプキン立てや敷き紙に書くようにして広めていくとしたなら、私は大いに歓迎し応援するであろう。