—— 今回の医療制度改革、小泉首相は「三方一両損」を貫き通したと言っていますが、先生はこの改革をどう評価されますか。
三方一両損? まやかしだね。患者負担は2割から3割に増えても、診療報酬の下げは2.7%。その実施のメドもたっていないじゃないか。2割から3割に増えるというのは、1割増えるのではない。5割増えるのだ。今まで800円で済んでいた病院代が1,200円になるということだ。
—— なるほど、三方一両損と言っても、小損に多損、損にもいろいろありケタが違うと言うことですね。
いや、それは数字の話であり、そもそもこんなものは制度改革でも構造改革でもない。医療保険は今のままだと2002年か2003年に破綻すると言われているが、どんな制度を作ったって、破綻するよ。いずれはね。かけても良い。
—— といいますと? 先生は、どのようにすれば良いとおっしゃるのでしょうか?
老人の医療費というのは増える一方、これは保険制度の問題ではない。一個人の問題としてもそうだ。医療技術は進歩する一方で、寿命はどんどんのびる。これは、一生のうちで病院にいる時間が増えるという意味だからね。
このまま寿命が150才ぐらいにのびて、80才からは病院暮らしだとしてみなさいよ。そうすると、80年間で老後の70年間の医療費をかせがなきゃいけない。この傾向はどんどん高まっていくだろうね。そのうち、「働くこと」は「自国の老人と自分の老後の医療費を稼ぐこと」と同義になる。人口の50%が病院で生活し、残りの20%ぐらいは病院で働くことになってもおかしくない。
これを抜本的に解決するのは、自ら寿命を決めて命を絶てる、安楽死を法制化する以外にないんだよ。これには倫理の転換が必要だから、なかなか難しいがね。
私が言っているのは、オランダの安楽死とは違うよ。生きながらえることの出来る病気でも、安楽死を選べるようにしなくてはいけない。安楽死を法制化するような倫理の転換をして踏み込むには、一度、医療制度と福祉の破綻を経験を踏まないと乗り出せないだろう。だから、どうしても、やっぱり医療制度はいったん破綻を見ることになりそうだ。