どんな組織も目的を持って作られる。たとえば消防署は、火事を消すためにあるわけだ。だからもし火事を見つければ、たとえ呼ばれなくても出動して火事を消し止める。これが消防署のミッションだ。
—— そうですね。誰も異論はないでしょう。
では自衛隊はというと? 自衛隊とは何のための組織かね?
—— 国を守るため……ですか?
そうだ。その通りだ。
そこで今、北方で我が国の領土が他国によって占領されている。これはどう考えても非常事態だ。私には、この事態でも出動しない自衛隊というのは、今後どんなことがあったって出動なんかしないんじゃないかとさえ思える。
本当は、彼らは「首相!北で我が国の領土が侵犯されています!これから北へ飛んで、侵略者から領土を守るために戦ってこようと思うであります!」とまあこんな具合に自ら提案するべき存在なのだ。
—— しかし自衛隊が自ら戦争を企てていては、軍部が暴走した太平洋戦争時代の我が国のファシズムがよみがえります。
そのために、シビリアンコントロールをきかせなくてはならない。それこそが、首相の役目なんだよ。
建設省が「橋を造りたいであります!」と提案する。
首相は、財政状態を考えて着工するべきかどうかを判断する。
文部省が、週休二日の導入を提案する。
首相が、国会に審議を諮って本当に導入するかどうかを決める。
防衛庁や自衛隊が、「領土を守ってくるであります!」と提案する。
首相は、大局的に外交・国際状況を判断して、出動命令を出すかどうかを決める。
しかし、橋は無尽蔵に造るものではないが、火事は消し止めるべきだし、侵入者は捕らえまたは追い出すべきだ。だからこの3つの例では最後の防衛庁の行動は一番そうあるべきだと言える。
—— なるほど、分かりました。では、どうして自衛隊や防衛庁はそう言い出さないのでしょうか。それとも、実は言っているのですか。
やっぱり詰まるところ、戦争に行きたくないだけじゃないのかね。しかし、彼らは国を守ることで給料をもらっている。本当はそんなことじゃ困る。
いいかね誤解を恐れずに言うなら、自衛隊員一人が死ぬことで国民一人を守れるなら、彼らは命を投げ出す……そのために、我々の税金で彼らが雇われているんだ。戦争に行くのをいやがっている軍隊など、税金で養っておく必要はない。
—— そうですね、有事関連法案などを作って、国民の権利を制限している場合じゃないですね。領土が侵犯されてる今こそ紛れもなく有事なんですから、実労働をして欲しいものです。
----でも、自衛隊員の方だって、相応の自覚と使命を持っていると思います。先生はどうして、彼らが戦争に行きたがっていないと思うのですか。
今君が言った有事関連法案だって、何を以て「有事」であるかの定義が欠落していることが問題になっている。でもね、そりゃそうだよ。
「有事」の定義を明確にしたら、それこそ直ちに、彼らは北方領土へ戦争に行かなくちゃならない。だから、彼らに「有事」の定義を明確になんてできっこない.....多分、腰抜け政治家の皆さんにも。
—— なるほど、そうですね。自分の首を絞めることになるわけですか。
うむ。いざ首相が「北方領土を守りにいけ」と命令したとしても、多分、彼らは動かないと私は思っている。官僚得意の作文が出てくるだけじゃないかと心配している。「……(前略)…………(中略)……… よって、北方領土出動は時期尚早と考えます」とか何んとか。
官僚はみんな首相を無視し、又は首相案を骨抜きにする。特殊法人の廃止についてだって、作文だけして結局実行しないじゃないか。私には、領土を守るための戦争だって命令されても実行されるとは思えない。
—— でもそれじゃどうして有事関連法案を作るんですか?
戦争には行きたくないけど、いざ戦争になったときに彼らが優位に立てるからではないだろうか。
ひとたび戦争になれば、彼らはきっと徴兵制を主張すると私は思っている。そして死地に赴くのは一般国民で、職業軍人たる自衛隊員は我々の上官だ。徴兵で招集した兵隊をスリッパで殴る役割だ。また召集令状に従わない国民の家に乗り込んで、成人男性をかっさらっていく。
このやりとりは、ナゾの思想家T氏と、T氏に師事している青年の会話を記録したものです。当サイトの管理人の思想とは全く関係ありません。