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マスメディアにより作られた、歪んだ「ブーム」は数多くあります。今や「ブーム」の大半がそれだといっても過言ではないでしょう。それどころか、世間は大して関心がないのに、単にマスメディアがはしゃいでいるだけの場合も多々あります。
日本の人口は1億人以上います。従って、“ヨン様”を空港に見に行く人が100人居て、アザラシのタマちゃんを見に行く人が1000人居たとしても、それは国民の100万人に1人、10万人に1人です。テレビの画面では多く見えても、実生活でたまたまそういう人にお目にかかれる確率は低いです。詰まるところ、騒いでいるのは一部の変わり者だけで、たいていの人は冷ややかなのかもしれません。
テレビはまた、この数百人しか居ない騒ぎでも、カメラワークと構図によって、まるでかなり大勢の人が集まっているかのように映すことができます。むしろ、この分野はテレビというメディアが得意とするところだとも言えます。日の丸を焼き捨てる某国のデモ行動でも、大勢の参加者がいるかのように思いがちですが、実際のところどのぐらいの規模かは画面では分かりません。
さて、マスメディアに属する人々が、何かのブームを巻き起こすことに成功したときに、自らの影響力を感じ取って自己満足に浸れることは、想像に難くありません。しかし、おそらく自己満足にはとどまりません。そういう人が集まっている場であれば、当然、ブームを作った実績は、自慢の対象となり、その世界では実力の証明の一つのように考えられても不思議ではありません。
こうして、マスメディアの世界には「あのブームはオレが仕掛けた」「これをはやらせたのはオレだ」と公言する人があちこちにいて、六本木で女の子とでも飲めば、それを自慢にするわけです。後輩は先輩を見て育ちますから、「自分も何かブームを作って、女の子にモテよう」と思う文化が生まれるでしょう。そうすると、もうネタはなんでも良いのです。何かをはやらせることにさえ成功すれば良く、ただ、はやらすことこそが勲章なのだと。
そんなわけで、マスメディアという業界には、本質的に、無用なブームを仕立て上げようとする力が働きやすいと言えます。