最近腹の立つこと
発泡酒の税率上げよ
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2002.3.13
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発泡酒の税率を上げるかどうかが議論を呼んでいる。しかし、消費者として発泡酒の税率を上げよという意見は珍しいのではないか。私の主張は、正確に言えば、発泡酒とビールの税率を同じにすることであり、ビールの税率を下げるのでも、双方の現行税率の中間をとって合わせるのでも良い。とにかく、発泡酒とビールの税率が違うのは、大変不幸なことである。
不幸なこととは言っても、この税率こそが発泡酒の生みの親であったこともまた間違いのない事実だ。原料のうち麦芽の重量が3分の2以上のものがビールであると、酒税法に定められている。麦芽の割合は三段階に規定されており、25%以下に押さえれば、1リットルあたりの税金が105円ですむことになる。ビールの場合1リットルあたり222円の税金がかかる。つまり、麦芽の量を減らすことで、税率を低くおさえ、「発泡酒」はビールよりも格段に安く販売できるのである。
他にも酒税法にはいろいろと酒類が分類されている。酒に税金を課すこと自体私は反対であるが、分類によって税率を変えることも良くないと思う。せめて、アルコール量などの数値に対して連続的に(例えばアルコール1ミリリットルあたり1円、とか)定めるべきである。しかし、連続的にしたところで、私がこれから指摘する問題は解決するわけではない。
おいしく味わうためのものであるはずの酒類が、税制によって人為的にゆがめられ、製造や原料にかかるコストが同じであるにもかかわらず、値段を考えてわざわざまずいものを選択して飲まなければいけない……という状態は不幸きわまりない。社会全体として、マゾ的な行為ですらあると言えよう。人間社会は、どうしておいしいものを口にしにくい制度を作って、自らを苦しめるのか。官僚によるくだらない規制の元で、このように不幸なことになる例は枚挙に暇がないだろう。この発泡酒のほんの一例に過ぎない。
注意して欲しいのは、私は何も発泡酒がビールよりまずいと言っているわけではないことだ。どっちをおいしいと感じる人がいても良い。しかし、発泡酒よりビールが好きな人が存在して、税制の都合でしぶしぶ発泡酒を飲むことがあるのは事実である。要は、酒税法は麦芽嫌いを優遇し麦芽好きを抑圧しているわけである。嗜好により人を差別するなどあってはならないはずだ。
もちろん酒税法の分類を逆手にとって発泡酒なるジャンルを開発したメーカーには敬意を表する。しかし、そもそもの事態がゆがんでいたことを忘れてはならない。今から税法を改正し、発泡酒の税率を上げるのはフェアでないようにも思えるが、長い目で見ればそうすることがよいことは確かだろう。私たちは税法の都合で自分たちの嗜好をゆがめられることがあってはいけない。
※本トピックで、「発泡酒」は本来「ビール以外の発泡酒」と読み替えるべきことは言うまでもないが、昨今の慣用としての「発泡酒=麒麟端麗、本生、……」という用法に従った。
【もう一つの本題】
発泡酒とビールの違いというのは微妙で、自分で飲みわけができると思っている人でもけっこう飲み分けられないものである。私は"ききビール"なるイベントを何度も体験し、自分も人もこの区別を正確につけられないことを良く知っている。
しかし、私に言わせれば、このような行為というか議論がナンセンスである。まず第一にビールはのどごしで味わうものであり、舌で味わってどうこう言っても仕方がない。おいしいビールとそうでないビールは、「あともう1杯」注文するかどうかで差が出る。普通のビールなら3杯飲んだら焼酎に移るとしても、おいしいビールならもう1杯ビールを続ける。こういう本人の意識しないところに違いが現れ、店やメーカーとしても知らずと売上が上がるのだ。ビールと発泡酒の区別がたとえ付かなくとも、発泡酒をもうたくさんと言うほど飲んだ後でさえ、ビールは更に1杯飲むことができるであろう。
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