A子さん(27歳・会社員)
山田太郎さん(67歳・無職)
田中花子さん(44歳・主婦)
こういった書き方は、「主婦」や「無職」と「会社員」が対応するものだと明示的に言っているわけではないので別に間違いではない。だが、「主婦であり且つ医師(女医)である」ような人ならば「医師」と書かれるだろうし、「主婦であり且つ会社員である」ような人なら「会社員」とか「OL」と書かれるだろう。職業がなくて初めて、主婦であれば「主婦」、主婦でなければ「無職」と書かれるのである。
こんなにもばかばかしいフローがあって良いものだろうか? 編集部は以下のようなチャートに従って事を進めるのである。
(1) その人は職を持っているか?
Yes → 職業をカッコ内に書きなさい。
No → (2)に進みなさい。
(2) その人は学生であるか?
Yes → カッコ内に「学生」と書きなさい。
No → (3)に進みなさい。
(3) その人は主婦であるか?
Yes → カッコ内に「主婦」と書きなさい。
No → カッコ内に「無職」と書きなさい。
こういう記述の仕方が、「主婦」の意味を誤解させる元であるし、そればかりではない。主婦に限って「無職」と書かないところには、何かしらの差別的な要素が見いだされてもおかしくない。男性は社会で働くのが当然で働いていなければ「無職」扱いであるのに対し、「女性は家事をするのが当然であるから社会で働かないからといって無職扱いはひどい」ということでしか説明がつかない。女性が働いて、男性が家事をやる家庭だってあるはずなのに、そのときは男性は「無職」と書かれるのだろう。念のために言っておくと、これは無職者と女性との両方に対する差別である。しかし、無職というのは恥ずかしいことではなく、職を持たなくとも食っていける者は無職で良いのである(実際には資産家で事実上の利息生活を送る者も、資産管理会社の会社役員などの形を取ることが多いだろうが)。
無職といっても「家事をしている」ということが言いたいのなら、「主婦」ではなく「専業主婦」とするべきで、それなら「学生」が記述されることと同じレベルの問題になる。これらは、職を持って仕事に従事するはずの時間を代わりに何に割いているかを示す言葉であるからだ(cf.家事手伝い)。