ニュースはただの一回、「本日、東海道新幹線で新たに品川駅が開業した」でよい。つまり、10月1日だけで良いはずなのだ。それを、「試験車両が通った」だの「報道陣に公開された」だの、いちいちニュースにするな。これらは、「事件」「ニュース」のたぐいではない。完全に予定されたスケジュールが近づいてきていて、それに従って予定された行事が行われているだけだ。記事を読む方からしたら全然「ニュース」じゃない。一体どういう利害から、マスメディアは品川駅の話題を毎日のように取り上げるのか。私が航空会社に勤務していたら、「マスコミのやつら、毎日新幹線の宣伝ばかりをしやがって」と、心穏やかでないだろう。
まあ同じことは、六本木ヒルズでも起きたし、丸ビルでも起きた。今度、名古屋の博覧会でも必ず起こる。これらは、どこぞの都知事ではないが、「
バカなマスコミがダボハゼのように食いついた」の類だ。JRが自社の宣伝のために毎日プレス向けに用意している話題を、マスメディアはそのまま垂れ流しにしているのだ。しかし、マスメディアの役割は、企業が流すプレスリリースや、記者クラブの情報提供を、本当に読者・視聴者が欲しがっている情報かどうかを吟味した上で、取捨選択し、組み立て、整理して提供することだ。今のマスメディアが流すニュースは、ニュースのふりをしてニュースの中にニュース以外のものが混ざっている。
彼らとて企業の広告宣伝費で食っている面もあるので、大企業が流したい情報を流すという「つきあい」も大切だろう。それに、このような情報過多の時代に毎日〆切に追われる中、あらかじめ「予定の立つ記事」であればありがたいに違いない。しかし、読者や視聴者の視点から考えたら、「ダボハゼに餌をやったら糞のように記事を出す」とでもいうような状態はいかがなものかと思う。こういう状況は、彼ら自身の存在価値をなからしめるものなのである。