—— 先生は、ご自分が中学校卒という学歴であることに、大変な自尊心を持っていらっしゃると聞きました。
はっはっは、高学歴がブランドになる時代は終わった。私の時代が来たよ。
—— しかし、大卒率が高まると同時に、大手企業はますます、大卒ばかりを募集するようになっているのではありませんか。
大企業はそうかもしれんが、それは大企業に勤めるという、たくさんある生き方のうちの一つを選択した場合の話であろう。しかし、職人の世界はどうだろう。
君は、寿司を食べるとき、大卒の板前と中卒の板前のどちらに握ってもらいたいだろうか。
君は、オーダー家具を発注するときに、大卒の職人が作るのと、中卒の職人が作るのと、どちらがよいだろうか。
中学校を出て職人の世界に入り、若い頃からしっかりとワザを身につけていた方が、よいものを作ってくれるという期待を持たないだろうか。「若いうちから」というのは重要だ。体で覚えるタイプのものごとは、経験の年数だけでなく、若いときに仕込むということが大変有効になってくる。
中卒がむしろ貴重となってくると、職人にとって中卒というのはブランドだ。今にきっと、そういう時代が来る。
—— しかし、先生ほどのお人が、本当に中卒なのですか。大学でたくさんの本を読み、歴史や政治思想を学んだ方なのではないかと思っていました。
—— まさか、学歴詐称ではないのでしょうね?。