—— 先生、日本の財政危機、国債のデフォルト懸念が指摘されて久しいですが、どうして未だに世の中は平穏に見えるのでしょうか。国債のデフォルトも、実質同等とみなされるハイパーインフレも、今のところ起こっていません。
国債がデフォルトしないのは、国債が順調に売りさばけているからに他ならない。しかし、いつまでも続きはしない。
—— そろそろ世間でも、日本国債がヤバイのではないかという認識はあると思います。それでも国債がさばけているのは、どうしてなのですか。
国債を買っているのは、主として銀行等の金融機関だからだ。
個人向け国債を買っている人たちというのは、私には到底信じられない。しかし、国民は銀行に預金をし、銀行はその預金で大量の国債を買っている。まあ、みんな間接的に国債を買っているようなものだ。
—— だからどうしたというのでしょうか。詳しく説明して下さい。
銀行だって、国債が安全だなんてこれっきりも思っていない。でも、国債を買わないわけにはいかないんだ。何となれば、国が国債を売りさばけなければ、以前に発行した国債がデフォルトする。一旦国債がデフォルトすればその時点で、国債は全体が大暴落だ。すなわち、すでに銀行が買い入れている大量の国債が、すべて紙切れ同然になるのだ。
これは、銀行の抱える不良債権の問題と全く一緒なんだ。
「この企業にはいままで100億円も貸し付けてきたわけだが、今さら手を引いたら倒産してしまうだろう。そんなことをして、みすみす100億円をパァにすることはできない。だから何とか延命措置をはかって、いずれ景気が良くなったら返済してもらおう」
これが、銀行が、不良債権に持っている根本的な考え方だ。不良債権を処理できない大きなメカニズムの一つだ。
—— なるほど、日本の財政もいわば巨大な不良債権なわけですね。
そうだ。銀行にしてみれば、“今回募集分”の国債だって、償還されると信じているわけではないに違いない。しかしハッキリしていることは、今回募集分の国債を買い取ってあげないと、たちどころにデフォルトとなり、今まで貸し付けた分が—— つまり買い貯めていた国債が全て—— パァになってしまうということだ。
今すぐ死ぬよりは、少しでも先延ばしして神風が吹くのを待つ。
これを自転車操業と言わずして何と言おう!