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先生、私も新ニイサで、はやりのオルカンやS&P 500を積み立てて来ましたが、どんどん値段が上がって、怖いくらいです。これはバブルなのでしょうか?
バブルと言えばバブルだが、今まで経験したバブルと違って、はじけるまでにはけっこう年数がかかるかもしれん。
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どういうことですか?
本来、株式投資は、安いときに買って高いときに売るか、一旦買って持ち続けるものであった。貯金のように「積立」で、増やし続けていくものではなかったはずだ。積立を前提としたものは従業員による「持ち株会」ぐらいであった。
ところが、今は S&P 500 などの指数連動の投資信託を積み立てることが普及し、様子が変わった。インデックス投資バブルと言って良いだろう。だがこのバブルは、従来のバブルよりもずっとタチが悪い。
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なぜですか?
問題は、「誰がアップルの株を売っているのか」ということだ。
S&P 500 連動型投資信託を1万円買えば、およそ300円ぐらいアップルの株を買っていることになる。もし eMaxis slim S&P500 が今月1000億円売れれば、ファンドマネージャーは30億円のアップル株を買わなくてはいけない。しかし、アップルがその都度、増資して株を売ってくれるわけではない。市場から買わねばならないのである。
末端の投資家は、「アップル株を買っている」との認識無く、アップル株が買い続けられている。同じくエヌヴィディア株も、テスラ株も。そして、「そろそろアップル株は天井だから、アップル株だけ売ろう」ということもできない。
こうして、S&P500 組み入れ銘柄は、買い手は常に存在しているが、売り手は持株を売ったら終わりだからどんどん減っていく。それでもファンドに毎月1000億円の流入があれば、残り少ないアップル株に30億円流入するのだから1株の価格は上がることになる。加速度が付くようにしてだ。
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なんとなく分かりますが、
「買い付ける株が一定数」ではなく「一定額の買い付け」であるところが問題なのだ。
たとえば「銀座四丁目の土地を買うファンド」があって積み立てていると考えればいい。銀座四丁目の土地は30万坪ほどしかない。ファンドの売れ行きが好調ですでに25万坪をファンドが買い占めたとして、毎月1000億円が流入すれば、残りの5万坪の一部を1000億投じて購入することになる。もし最後に1坪しか残らなくても、それに1000億円を投じることになるだろう。その瞬間、銀座の地価は坪1000億円ということになるが、では30万坪が3京円の価値があるのかと言えばそうではない。
こうして、ファンドが買い続けていて売り手がいないから価格が上がり、末端の投資家は個々の銘柄を吟味していないから、不当に高い株価であっても買うことになる。株価指数が崩れない限り。
結局は、ファンドが買っているから株価が見かけ上、上がっているだけだ、という状態になるだろう。実需ではない。これをバブルと言わずして何をバブルと言うのか。
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はじけますか?
このことに多くの人が気づき始めること、そして、一株当たり利益(PER)・株価純資産倍率(PBR)と比較して株価が著しく乖離してくれば、さすがにインデックス投信を解約する人が出てくるだろう。このとき解約する人が一気に続出すれば、それは銀行の「取り付け騒ぎ」と似たようなものになり、一気に価格は崩れるだろう。要するに、投信を買い付ける人よりも解約する人が多くなれば、値崩れは、指数組み入れ銘柄の全てに起きる。
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パニックになりますね。
少なくとも、このときに政府やファンド側は、国民に対して狼狽売りを控えるよう誘導するのだろう。「取り付け騒ぎ」のようなことになっては大変だから。
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いつ、はじけますか?
分からないが、それまでしばらくは、とんでもない上昇を続けるのかもしれない。そのあとは、想像を超えた世界恐慌になるであろう。戦争にならないことを祈るしかない。