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思想家T氏が語る
(「金を払っている方が偉い」とは、ゲスの考えである)
2016.1.18
——  先生、取引先に、生意気な社員がいるんです。金を払っているのはこっちなのに、全く対等な口をきいて、困っています。
 金を払っている方が偉い、というのはとんでもない間違いである。金を払う側ともらう側の立場は、あくまでも対等である。

 なぜか? 契約というのは、常に対等だからだ。売買であれば、千円払って千円のものをもらった。サービス業であれば、千円払って、千円分のサービスを受けた。千円の中には「儲け」も含まれているが、そもそも「儲け」がなければ商品もサービスも提供する気なんか起こらないのだから、それも含めて「等価」と考えるのである。

——  お客様は神様、ではないんですか?
 「お客様は神様」というのは商人の側からみて感謝の気持ちで言う言葉であり、客自らが言う事柄ではない。金を払っているからこっちが偉いとか、お客様は神様だとかいうのは、とんでもない思い違いである。

——  納得できません。店や業者が、客に頭を下げるべきなのは当然だと思います。
 お主のような者が、「金を払っている方が偉い」と勘違いする理由は少なくとも2つある。

 まず、飲食店とか、ホテルや旅館などのサービス業だと、「よくしてあげる」「ひれ伏す」ということもその対価、サービスの中に含まれている。だから、一般には、客を丁重に扱うことをする。この場合でも、対価に含まれる限度を超えて丁重にする必要はない。一方、一部のラーメン屋などのように、「よくしてあげる」ことがそもそも対価に含まれていなくて、おいしくても客の扱いはぞんざいで不快なことだってある。それも当然なのである。「よくしてあげる」かどうかは、商慣行や契約内容によるのであり、金をもらう側が払う側をよくしてあげなくてはいけないという普遍的な道理はない。

 もう一つは、「お願いして買ってもらった」「お願いして来てもらった(宿泊してもらった)」など、いわゆる「セールス」「売り込み」があった場合である。この場合は、道義的な上下関係が生じやすい。しかし、本当はあくまでも対等である。望みどおり契約をしてくれたことに恩義があっても、契約の中身では上下関係はないのである。

 こういうことをよく理解せずに「金を払っているからこっちが偉い」と考えて威張りくさるような人たちは、性根が卑しく、人間のクズと言って良かろう。

 特に、企業間の商取引などで、元請けと下請けの上下関係、納入業者と納入先調達部門の上下関係などは、この勘違いによるものが大きい。

 お願いして買ってもらったり、お願いして契約してもらったのなら若干仕方のない面もあるが、そうでないのなら、金をもらう側が卑屈に出る必要は全くないのである。

——  なるほど、私が悪かったようです。
 金を払っている方が「偉い」ということにならない、端的な例が、大家と店子・入居者の関係だ。普通、金を払う賃借人より、大家の方が立場が上である。なぜか?

 大家からすれば、部屋は誰に貸したっていいのである。一方、賃借人は、その部屋に住みたいと思ってしまったら、もうその大家に頼むしかないのだ。

 「欲しい」「契約したい」などと考えたら、もう恋したも同然。立場はその時点で、客であっても下なのである。本や家電など、どこでも全く同じものが買える場合を除けば、欲しいと思った方が負け。欲しいと思わせた方が勝ちなのである。この場合、金をもらう方が立場が上なわけだ。

そもそも さんのコメント:
金さえ出せば、何をしてもいいというのは間違い No.3
さんのコメント:
資本主義社会の常識 No.2
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