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思想家T氏が語る
(温泉入れ替え問題における旅館側の正義)
2023.3.5
——  お湯の入れ替えは年2回。レジオネラ菌は基準値の2倍とも3700倍とも。とんでもない旅館があったものですが、許せないのは、社長の記者会見です。
私も思った。この社長、もっとハッキリ言ってしまえばいいのに、と。

——  どういうことですか?
この社長が言っていることは、おそらくはほとんど、事実であり、真実でもある。いわく、自ら幼少の頃からこの温泉に浸かって育ち、今でも一日3回は入っている。浴槽の容量の4倍のお湯を掛け流しで入れているのだから、実質的に1日4回交換しているようなものだ。塩素は匂いが嫌いだから入れたくなかった。レジオネラ症になった人は、基礎疾患があるのだと思う...

どれも、悪意なき真実であろう。

——  先生、法令に違反してるんですよ?
法令が存在するよりずっと前から温泉は存在し、この宿も18世紀から存在しているのである。温泉は時の権力の栄枯盛衰をずっと見てきて、これからも存在し続けるであろう、今の社会風潮など超越した存在だ。

2000年近く続く天皇家に比べれば、大日本帝国も、今の日本国も、ついこの前に成立し、いつ滅びるかもしれない小さいな存在であるのと同じ。

私が社長だったら、こう言い放っただろう。「塩素を入れるなど温泉に失礼」「公衆浴場法は温泉を侮辱する天下の悪法」「私どもが守り抜くべきは温泉であり、お客は二の次」と。

——  むちゃくちゃじゃないですか?
神社と比較したら良い。神主が「参拝客第一」なんて言い出したら、拝金主義と思われ参拝客も減るだろう。「神にお仕えするのが私たちの使命、参拝客は二の次」が正しい神主の姿勢だ。

——  古いですね。今は、そういう時代じゃないんですよ。コンプライアンスが重要で...
確かに、今は、そういう時代だが、おそらくそんな風潮が続くのは短い間だ。せいぜい10〜20年で、また世間の風潮も変わるだろう。しかし旅館は何百年もあり続け、温泉は、何千年もそこに湧き続ける。

世の中は、一時(いっとき)の感情と風潮で、歴史ある存在をつるし上げ、破滅に追い込むべきではない。

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