——
人生ほど大きなテーマでなくたって、そうです。たとえば旅行なら、行く前から天気と忘れ物が心配です。旅行中は、道に迷わないか、予定通りに移動できるか、宿はハズレでないか。怪我をしないか、お金は足りるか。家に帰り着くまで、心配だらけなのです。
つまり君のような人に、助言できることは、こうだ。ものごと何でも、過程を楽しむことを知りなさい。
だいたい旅行なんてものは、過程そのものなのである。旅行のゴールは、いつだって自宅なのだ。達成だけに主眼を置いていると、何のための旅行なのか分からない。
テレビゲームだって、そうだ。クリアすることが目的なのではない。クリアする過程を楽しむためにやるのではないか。
目標の設定が悪いことなのではない。ただ、結果や達成だけを目的にすると、達成するまでの間はただの忍耐と苦労と心配の日々になってしまう。しかし、結果に至る過程を楽しむものなのだと思えば、見方が変わってくる。
出世ゲームだってそうだ。その過程を楽しめる人と、忍耐と不安で過ごす人では、大きな差がある。前者なら、達成できなかったとしてもそれなりに意義を見いだせる。後者だと、出世できなかったら自分のサラリーマン人生は何だったのだということになる。
恋愛を楽しむコツだって同じだ。「ふられたらどうしよう」「結婚に至れなかったらどうしよう」などと心配していれば、恋愛など楽しいどころか不安の塊のようなものになってしまう。結果はどうあれ過程を楽しむものなんだと考えれば、見方も変わってくるのである。
芸やスポーツで上達する過程、財産を築く過程、作品を作り上げる過程など、そういった最中の充実感は、達成してからでは味わうことのできない貴重な体験なのだ。