二階建て新幹線とか、通勤電車にも、最近になって2階建て車両がやたらと増えてきた。二階建てはデッキ部分と客室の間に階段があるため、車内販売のカートが入れない。そのため、列車内に多数の自販機を置いているようだ。二階建て車両は当然ながら1フロアの階高が普通の車両よりも低く、客室には圧迫感があるのを否めない。
ところで、この二階建て車両というのは、誰にとってトクなのであろうか? 業者は人気アイドルを使って“もっともっと”などというふざけたCMをタレていたこともあったが、「一両に“もっともっと”客をつめこむ」ことを可能にしたのがこの二階建て車両なのである。列車の本数を増やすかわりに、一本に多数の乗客を詰め込む。ホームの長さの関係で、連結数を増やすには限界がある。そこで、二層構造にして効率的に乗客を輸送できるようにしたのが二階建て車両だ。
このような二階建て車両により運送コストが下がり、乗客も狭い空間に押し込められるのだから、本来二階建ては「二等席」と同等の位置づけで値下げの対象にするべきものだ。二階建て車両がサービスの低下であるのは、運転本数を減らし、運転間隔を長くできることからも説明可能だ。われわれは子供のように好んで二階建て車両に乗り、喜んで二階席を目指していて良いわけではないのである。
このことに気づかれないようにするためか、業者側の手法は巧みだった。二階建てがまだめずらしいのをいいことに、それをまるでサービス向上であるかのように宣伝するというお馴染みの作戦に出たのである。“もっともっと”輸送力が増えることは確かにサービス向上のように思えるかも知れないが、客が増えた分の輸送力を増強するのはサービスでも何でもない、当たり前のことだ。それを、経費がかけて乗客が便利になる列車本数の増便で対応せず、費用が圧縮でき乗客に不便と不愉快を強いる選択肢を採用したのは、業者の乗客に対する重大な裏切りだ。
私が心配なのは、業者がこのことに味をしめて、次々と全国の車両を二階建てに置き換え、その分運転本数が減らしてしまうのではないかという点だ。もともと私は、交通需要の変動には運転本数ではなくて車両の連結数で対応せよと
別のトピックでも述べている。二階建て車両の登場はそれとは正反対の方向に選択肢を増やした訳であるから、全く私の気は休まらないのである。