解散宣言・「正しい日本語を守る会」
お召し上がりですか?
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2006.5.22
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予定と予定がぶつかることを「バッティングする」と言うことがある。これを「ブッキング」と言う人が、たまにいる。おそらく、「ダブルブッキング」に由来するのであろうが、「ブッキング」自体は「予約する」の意味であり、「ダブル」の方を省略してしまってはなんにもならない。
このように、肝腎な方が省略されてしまう困った例として、最近定着しつつあるバイト語に、「お召し上がりですか?」というのがある。
店内で食べることも、持ち帰りも可能な飲食店が増えている。このタイプの店では、客に対する店員の最初の言葉がたいてい、「いらっしゃいませ、こちらでお召し上がりですか?」である。この「こちらで」を省略してしまい、「お召し上がりですか?」といきなり聞くのである。
何年か前に初めてこう聞かれたとき、私は戸惑った。しかし、今はもう当たり前になってしまった。これは、「店内で召し上がりますか」という質問なのである。
わざわざ説明するまでもないことだが、「召し上がる」は「食べる」の尊敬語であって、食べ物を買う以上、「召し上がる」のは当たり前である。どこで召し上がるか、誰が召し上がるか、に違いはあるかもしれないが、普通は召し上がるために買うのだ。この場合、「こちらで」「店内で」という言葉は、省略してはいけないはずである。なのに、持ち帰って自宅で食べる場合は、ここで「はい」と答えてはいけないのだ。
こういう唐突なバイト語は、老人がファーストフードを利用しにくくしている一因でもあろう。飲み物やポテトのサイズの言い方だって、大中小となっていた方が本当は分かりやすい。私は小学生の頃、サイズのLMSの順番がなかなか覚えられなかった。
ついでながら、「召し上がる」という尊敬語に「お」を付けて「お召し上がる」と表現するのも、どうにも美しい日本語とは言えない。そもそも、「こちらでお召し上がりですか」ではなくて、「こちらで召し上がりますか」と聞くべきではないのか。
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