そもそも人間は、広さや大きさに関しては「東京ドーム○○倍」という表現より「東京ドームの○○分の1」という言い方の方がピンと来るものだ。つまり、より大きなものと比べて、その「半分」とか「○分の1」と表現するのである。例えば東京ドームに立ってその10個分の広さを想像するには創造力を駆使するしかないが、東京ドームの10分の1なら、東京ドームに立って目の前の景色の適当なところに頭の中で線で区切ることで「想像」しなくても「見て実感する」ことができるからだ。
しかし、そう表現する例は少ない。より大きなものを引き合いに出すのは、彼らにとって不都合だからだ。なぜなら、こういった類には「大きいんだぞ」ということを強調してビックリさせたいという、地元のプライドがある。大きいことをアピールして観光客に来て欲しい。彼らにしてみれば、正確に大きさを把握してもらったって得はない。だから、100倍でも1,000倍でも良い。数字が大きくなる方が好都合なのだ。
東京ドームの5,000倍もある湿原なら、野球場と比べるのではなく、例えば東京・山手線の内側の面積などと比べる方が妥当だ。そこで、観光地に行くたびに東京ドーム単位でアタマを攪乱されることのないように、次の変換式を覚えておこう。
山手線の内側の面積=東京ドーム1,300個分
釧路湿原は山手線4個分、大笹牧場は山手線の6分の1だ。これで、かなりイメージがしやすいだろう。もう一度、繰り返そう。東京ドームと比べることが間違いなのだ。
しかし、ここで問題がある。私が示した指標は、首都圏在住の人でないとイメージできないのだ。そこへ行くと、仮に東京ドームに行ったことがなくても、大きな野球場に行ったことがあれば、イメージすることはそんなに難しくない。だからこそ東京ドームが広さの単位として使われるのかもしれない。
一番狭い都道府県である「香川県」は、ときどき東京ドームと同じように使われることがある。
【用例】
・北海道の別海町の面積は、香川県の0.7倍に匹敵します。
不幸なのは、東京ドームより大きくて香川県よりも小さい、国民みんながイメージできる「何か」が存在しなかったことなのだと言えよう。
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