ではどう言い換えればよいのか。会社を出てしまったからと行って家に帰ったかどうかは分からないので、「帰宅した」というのはどうもしっくりこない。飲みに行ったり買い物に行っているかもしれないからだ。これらは帰宅の途上での出来事であって、大枠では「帰宅した」という行動なのだという解釈をすればよいのかもしれない。
少々分析的なことを言えば、「退社」という言葉は、「出社」に対応する言葉としても使われ、「入社」に対応する言葉としても使われているということになる。
しかし、これほど不思議なことはない。普通に考えたら字の構成から考えて、「入社」と「出社」が対になる反対語であってしかるべきなのだ。「退社」に対応する言葉は「進学」ならぬ「進社」という言葉があればスッキリするだろう。
しかしそれでもなお疑問は残る。「出社」というのは考えてみれば不思議な言葉で、「会社を出る」という意味ではなく「会社に出る」という意味だ。日本語の「出る」という言葉は紛らわしい言葉で、この場合どこを出たのかと言えば「家を出た」に過ぎない。しかし、会社の前に着いた状態からすれば、どう考えたって「外から会社に入った」になるはずだ。だからといって単に「会社に入った」と表現すると、就職して従業員になったことを指す。
日本語を学ぶ外国人にとって、これらの言葉による混乱は相当なものだろう。
【免責】このページは、筆者の考えで構成されているものに過ぎません。筆者は国語の専門家ではないこと、記述の正当性は何ら検証されていないこと、記述を参考にしたり転用したりした結果について責任を持てないことをお断りしておきます。