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思想家T氏が語る
(住宅買い換え支援こそ官の役割)
2009.6.25
——   「“過去最大級”の住宅ローン減税」が話題になっていますが、先生はこのような政策には反対だそうですね。
 住宅ローン減税のような、「買い時」あおりと裏切りの連続は果たして良いことなのか。「ただいまキャンペーン割引なので、今買った方がおトクです」と言って買わせておきながら、そのキャンペーンが終わらないでダラダラ続いているのと同じなのである。それどころか、後から買った方が、一層“おトク”なキャンペーンになってしまった。国家が国民相手に行なうこととしては、全く卑劣で、携帯電話やエステ、英会話などの怪しいキャンペーンと何ら変わりない。

——  そうですか。でも、住宅需要を喚起することは、建設業だけでなく、周辺産業への波及効果も大きく、景気対策として有効なのではないですか?
 年がら年中キャンペーンを展開し、「来年は更におトクなキャンペーンが始まるかも知れない」との疑念を抱かせる。こんな政策が本当に、果たして本当に住宅需要を喚起するのか? 第一、不公平ではないのか? 昨年5000万円を借りて入居した人は、気の毒なことこの上ないではないか。

——  しかし、ない需要を引き出そうとするなら、こういった思い切った政策も必要なのではないですか?
 「ない需要」、というのは、誠にその通りだ。最も期待できる、いわゆる“団塊ジュニア”世代も、“持ち家派”はあらかた住宅取得を終えつつある。今さら減税で需要を煽っても、少子化という流れの中で、住宅需要など先細りもいいところなのである。

——  では、どうすれば良いのでしょう?
 例えば、住宅の「買い換え支援」というのは、意味があるだろう。既に住宅を取得した人たちに、もう一度、取得させるのである。現在の住まいが手狭になったり、転勤や転職などで地理的に都合が悪くなって、新しい住宅に買い換えたいという需要は、潜在的に相当あるはずだ。

——  ある“はず”とおっしゃいますのは?
 現実問題として、住宅の「買い換え」は、相当ハードルが高く、あきらめている人が多いと思われるからである。

 住宅ローンの残債を抱えたままで、別の住宅を取得するのは容易ではない。一旦、賃貸住宅に引っ越して、旧居を売却してから新居を取得するのが最も確実だが、仮住まいにかかる費用や手間は無駄であるし、旧居の売却額で残債が返済できるとは限らない。

——  新居を買って、引っ越してから旧居を売ればいいのではないですか?
 その場合、新居と旧居の住宅ローンが重複する時期が生じる。住宅ローンの重複は、銀行が認めない傾向が強い。尤も近年では、銀行によっては、重複自体は問題としないケースも増えてきた。

 しかし、ローンの重複期間があると、家2軒分のローンの返済能力があるかを審査されることになる。だが、往々にして、年収からみた返済可能額いっぱいに借りているので、さらに新居分の返済余力など、ない場合が多い。

 返済能力が十分であれば、住み替えローンやつなぎ融資が利用可能なケースもある。しかし、ローン重複が無理であれば、新居の融資実行日までに旧居の売却を済ませなければならなくなる。こうなると短期間で確実に売却せねばならず、安値で投げ売りせざるを得なくなるのである。

——  仕方ないんじゃないですか?
 これは本人だけの問題にとどまらない。不動産相場というのは、周辺物件の取引実績で決まる側面もある。銀行が、ローン利用者に物件を投げ売りさせるということは、その物件だけでなく、周辺不動産相場を押し下げる要因にもなる。つまり、その銀行が他の顧客に対するローンで担保に取っている物件の価値をも、下げてしまう。

 銀行は、個別案件では投げ売りさせても回収したいかも知れないが、それによる不動産相場の下落で、結局は自分たちにもツケが回ってくるのである。

——  では、どうすればいいんですか?
 このような事情で本当は買い換えたいが買い換えられないという人たちの需要を、引き出す政策を行なうのである。これなら、既に住宅取得を済ませた人たち、団塊ジュニアの多くも、対象となりうる。住宅ローン減税など所詮、需要の先取りであるが、こちらは需要の創出だ。

 現在の住宅ローン減税は、一言で言えば、最初の10年間は金利の1%を国が負担します、というものである。これは、廃止とする。

 例えば、自己居住用物件を買い換える場合の特例として、旧居を国が、周辺相場で買い取るというのが分かりやすいだろう。この制度を利用する場合、新居の住宅ローンが実行される日に旧居の買取も決済され、同日中に旧居の残債を消せるようにすると良い。この条件であれば、現に住宅ローンを返済中の人も、そうでない人と同じ条件で物件を探せるようになる。この制度では、国の買取後一定期間は、家賃相当額を支払って旧居に住み続けられるようにし、ゆとりをもった引越計画を立てられるよう便宜を図る。国は、買い取った土地を、公売のような方法で処理すれば良いだろう。

 これをやっていると、住宅ローン減税よりも財源が必要なように見えるが、相場で買い取った土地を相場で売却できれば、負担はほとんどない。

 他に、旧居の住宅ローンを、1年以内の売却を前提等を前提とした非遡及型ローンに借り換えできる制度も良いだろう。自己居住用物件の買い換えを前提に、旧居の残債の借り換えに利用できる特別なローンとする。非遡及型としたのは、物件の処分が前提なので、最悪の事態でも抵当権を実行されるだけで、弁済は完了する。当然、こんな割に合わなそうなローンに民間は手を出さないだろうが、これを融資するのは、住宅金融支援機構が適当だと思われる。民間ができないことだから、官がやる。フラット35等よりも、こういう官ならではの分野に専念すべきだ。

閉鎖希望 さんのコメント:
婆亀! No.5
江古 さんのコメント:
もったいないの一言
(動物呼ばわりはもっと酷い)
No.3
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