—— あと数時間で、2016年のオリンピックの開催地が決まろうとしています。先生は、東京に誘致することに反対なんでしたよね?
東京誘致に反対どころか、どこで開催しようとも、開催自体に反対だ。
—— では、国際オリンピック委員会(IOC)総会で首相やら東京都知事が自国での開催を訴えて演説しているのを考えると、心穏やかでないですね。
こういうものは、「誘致推進派」の演説だけ聴いたって意味がないではないか。実際のところ、市民の何割が誘致に熱心なのかが大事だ。そして、一定割合の「誘致反対派」がいるような都市では、開催するべきではないだろう。過激な「反対派」が居たり、市民の大多数が無関心だと、結局しらけた大会になってしまう。
だから、IOC総会には、ぜひとも、各開催候補地の「反対派代表」も招致して、演説させるべきだろう。市民団体の代表みたいなのが出てきて、「私たちは、今さらこのリオでオリンピックを開催して、生活をかき回されたくはないのです」「私たちが欲しいのは、お祭り騒ぎよりも医療と福祉です」などと切々と訴える。そうでなきゃ不公平だ。一見盛り下がりそうなこの演説は、誘致推進派とのディベートとしてみれば相当熱いものになるはずで、これ自体が盛り上がるかもしれない。
—— そういうディベートは、各都市が立候補するかどうかの前の段階で自国内でやるべきなんじゃないですか?
それはもちろんだが、仮に誘致することに決まっても、反対派が消えるわけではないし、大会が盛り上がるかどうかには、市民全員が歓迎しているかがとても重要なのである。従って、オリンピックの成功には、開催地の世論が歓迎ムードかどうかを調査して判断基準にしなくてはならないのだ。立候補してきたからといって、市民一丸である、と鵜呑みにするのは適切でない。
—— オリンピックの成功のためには、っておっしゃいますが、先生はオリンピック廃止論者なんじゃなかったんですか?