作詞家の大御所が緊急会見「歌わせない」森進一に激怒
歌手、森進一(59)が代表曲「おふくろさん」を二度と歌えなくなりそうだ。森が無断で「おふくろさん」にセリフを加えたことに激怒した作詞家の大御所、川内康範氏(86)が20日午後、都内で緊急会見。「もう、歌わせない」と声を震わせた。
ZAKZAKのサイトより
話題作りの茶番なのか、本当に怒っているのか、私には分からない。いずれにしても、川内氏の行動は「晩節を汚す」という言葉にぴったりだろう。wikipediaによれば、川内氏は「近年はアルツハイマーの療養に当たっており、政治評論や紙面でのコメントはなるべく差し控えているそうだ」とのことなので、その辺りも今回の行動と関係があるのかもしれない。
さて、私が今回の騒動に際して思うのは、著作権者にそこまでの権利や横暴が許されるのかと言うことである。実際、世の歌い手たちは、他人事ではないと震え上がっているのではないだろうか。
確かに著作権者の権利の一つに「同一性保持権」というものがあり、勝手に歌詞を改変されると、その権利が侵害されたことになる。今回は、改変でなく、冒頭に「付け足し」が行われただけだから、改変と見なすかどうかは微妙かもしれない。私は放映時のことを良く覚えていないが、もしそれで「作詞・川内康範」とだけテレビ画面に出ていたなら、付け足し部分も氏が作詞したと誤認されることになるから、気の毒ではある。
しかし、今回の問題はそういうことではないのである。
「付け足し」が法的に許容されるかどうかが問題ではない。歌は著作権者のモノで、それを歌わせるも歌わせないも、著作権者の腹ひとつで決められるという問題が、浮き彫りになったのである。今回はたまたま「歌詞の付け足し」が問題になっているが、これがたとえば「森は最近調子に乗っていて気にくわないから、歌わせん」という理由でも通るというのか?
だとすれば、これは実は大変なことなのである。自分の提供した楽曲が、大変なヒットをしたので、以降、一回歌うごとの著作権料を法外に値上げするなどの暴挙が行われかねない(おそらくJASRACに委託せず、直接徴収することになろう)。まあ、そんなことをしたら作詞家・作曲家としての信頼を損ね、以降の仕事がこなくなるから、普通はそんなことはしまい。だが、晩年の作詞家は違う。往年のヒット曲をたくさん世に送り出してもう引退した作詞家なら、いくら値上げしたって、今後の影響はない。
川内氏の行動は、まさにこれに類似するものであろう。たまたま、現在森に求めているものが金銭でなく礼節であるだけだ(今後、金銭に化けないとも限らない)。そして、川内氏にもその気はなかろうが、こんなことでは今後川内氏に楽曲を提供してもらおうと思う歌手はいなくなるだろう。
言うまでもなく、流行曲をはやらすのは著作権者だけではない。歌い手と、プロダクションと、関係者の尽力のたまものなのである。それが、いつなんどき、著作権者の意向でストップされるか分からないのでは、たまったものではない。
歌い手の保護という観点から、ここにはルール作りが求められて当然だ。そうでなければ、歌手は安心して活動できない。