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思想家T氏が語る
(泣かせる映画が、名作なのではない)[シリーズ 4]
2011.9.1
(「(これからの世代が映画を楽しむために)」からのつづき)

——   先生は、最近、映画でいいなと思ったこととか、ないんですか。例えば感動して泣いたとか。。。
 「ポケットモンスター ディアルガVSパルキアVSダークライ」を見る機会があったが、何度も泣きそうになった。

——   さんざん「最近の映画は…」とか言っておきながら、そんな子ども向けの映画で感動してたんですか。
 感動したわけではない。

 事実、もう一回見たいとは思わないし、面白かったとも思わないし、見て良かったと思ってもいない。

——   どういうことですか。
 映像文化はこの百年足らずの間に、「泣かすためのパターン」を研究しつくしてきた。そのパターンを効果的に使っているだけで、別に映画自体が感動的なわけでもないし、名作なわけではない。

 例えば、脇役の効果的な死なせ方とか、別れのシーンとか、誤解され嫌われていた者が実は正義だとか、音響との組み合わせかたとか。

——   まあ、確かにテクニックはありますね。
 だから、「泣く映画=名作」なのではない。しかし、人は勘違いしやすい。

 遊園地デートで絶叫マシンに乗ると、スリルによる胸の鼓動を恋愛のドキドキと勘違いし、その後の展開が良くなるという説がある。

 その説で言えば、映画を見て泣くと、それが「感動して泣いた」と勘違いする人が多いのだ。感動して泣く場合もある。だが、全然関係ない場合もある。

——   関係ない場合とは?
 泣かせるパターンの応用は、まだ、タチが良い。

 ひどいものは、ただただ悲しくて惨めなだけなストーリーを見せて、単純に同情で泣かせるものだ。

 この最たるものが、テレビ局が味をしめ、臆面もなく垂れ流している、「難病モノ」だろう。

(「(CGが映画文化にとどめを刺すのか)」につづく)

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