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最近、CDTVも見なくなってしまいました。流行の歌を知っておこうと思って見続けてきたのに、どうも本当にこれらの歌がはやっているような気がしないのです。
当然だ、ヒットチャートの上位にあることが、必ずしも流行っていることを示すわけではないのは、もう十年以上前から明白なのだ。
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そうなんです、昔は、ザ・ベストテンのような番組とか、オリコンチャートのような順位が、実感と合っていたような気がします。それが、最近のCDTVときたら、半分ぐらいは意味不明なアニメの歌だったりとかで。
元々、ポップミュージックの世界では、チャートの上位にいること自体が売上を伸ばす好循環がある。だから、チャートの上位を取ることは、レコード会社等からすれば非常に重要になる。
本当は、月間や年間での売上枚数などでチャートの方が、人気度を表す指標としては正確だ。だが、この情報は鮮度が求められることもあって1週間単位が標準なので、小手先の戦略でもって順位を操作することがたやすくなる。
例えば、CMなどでの露出を増やし、消費者をじらした上で、「買いたい度」がイッキに高まったところで発売する。こうすることで、発売日に売上が集中し、総枚数は別としても最初の週に売上を集中させることで、1週だけ良い順位が取れることになる。
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そうですよね、昔と違って、発売と同時に1位で、すぐに消えていく歌ばっかり。だから、覚えられないんですよね…
当たり前のことだが、発売直後の週に1位で、翌週から10位以下に落ちるような曲と、下位からじわじわと挙げてきて長い間10位以内にいる曲では、後者の方が、支持されている曲だと言える。しかし、そういう曲が非常に少なくなっているのが現実だろう。
多くのチャートが、順位だけで、数値を示さないのもまた問題だろう。ある週の1位と、他の週の1位では、全然実力が違うこともあるのに、1位は1位で一緒。そういう扱いが好まれているかのようだ。
そして、AKB48手法の登場によって、“総選挙”の投票権を欲しがる一部のファンによる大量買いを誘って、またヒットチャートがゆがめられている。これはもう、ポップミュージック業界として末期状態に思えるし、このまま本当に消滅してしまうのではないか。
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では、音楽業界としてはどうしたらよいのでしょうか。
彼らは、「若者が携帯電話にお金を使うようになってCDを買わない」とか、「ネットで違法ダウンロードするのでCDが売れない」とか言って、人のせいにばかりしている。が、本質はそうではない。
消費者は、CDを買う際に重要な参考情報にするヒットチャートが、あまりにも実感と乖離していて、うんざりしているのだ。私が今言ってきたようなことを明確に考えていなくても、継続的な失望により、消費者は学習してしまっていると見るべきだ。
これは、業界がランキングを長年もてあそんで来た結果であり、自業自得以外の何ものでもない。もう一度原点に立ち返って、消費者をたぶらかして販促上のテクニックで買わせるような考え方をやめるべきだ。そして、真に消費者の信頼を取り戻していくことを一歩一歩進めねば、今にポップミュージックは廃れて、人は昔の音楽だけを聴くようになってしまうだろう。
(「
(先の暗い音楽業界)」につづく)