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福島第一原子力発電所の事故収束にあたる作業員が、深刻な人手不足に陥っているようですね。
現在は、多重債務者などを活用し、闇社会が仕切り、タコ部屋も同然の強制労働だという噂だな。
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しかし、事故収束には何十年もかかるのです。この先、作業員不足をどうするつもりなのでしょう?
事故直後から、早晩、作業員不足が問題になることは指摘されていた。しかし、今はおもてだって報じられなくなってしまった。
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この先、徴兵制や裁判員制度のように、一般国民を強制徴用して収束作業にあたらせることにならないか、心配です。
それはさすがに、最終手段だろう。しかし、それ以外にも、手はいろいろある。
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どんな方法があるのですか?
懲役刑の労働の一つとするのも手だが、これも国際社会の人権批判に晒されるだろう。私が最も心配するのは、日本社会の得意とするところである「強制ボランティア」だ。
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強制ボランティア?? どんな風にするのでしょう?
日本風イジメ社会、村八分文化をもってすれば、不可能はない。3つのシナリオを示してみよう
ひとつは、勤務先を通じて募集するボランティアだ。経団連などを通じて「各企業は、企業規模に応じて10〜100名のボランティアを募ることを目標とする」などと割り当てを行い、加盟企業に押しつける。企業トップはそれを事業部単位・支店単位にボランティアの募集目標数を割り振る。あとはもう、分かるだろう。本当に自発的に行く者が居なければ、事実上指名され、拒めば会社で居場所が無くなるか事実上のリストラに合うだろう。こんなことは、今でもマラソン大会とか何とかで行われているのである。転勤を拒めないのと同様に、このボランティアは退職の覚悟がないと断れまい。
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なるほど、それは断りにくいですね。
もう一つは、自治会を通じて行なうものだ。都道府県庁、市町村単位でボランティアの募集目標が設定され、自治会にそれが下りてくる。すると、町内会長などが必死で集め、頼まれて断れば村八分である。これは、近年、祭で御輿の担ぎ手が不足している中、何とか集めるのと同様。元来、強制ボランティアは自治会の得意分野だろう。
以上2つの方法は、地域の野蛮な祭や伝統芸能などを絶やさぬように、現にあちらこちらで行われている、伝統的な「強制ボランティア」だ。
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なるほど、それは断りにくいですね。
最後に、学生に対するものだ。ボランティアという名目も良いが、研修とか社会実体験とか、いくらでも名目は付けられる。高校生相手に、1ヶ月程度の合宿のような形を取り、「きずな」とか「助け合い」とか美辞麗句でかため、基本は見学だが手伝いも可能とか何とか言って、建屋周辺の瓦礫の片付けや物を運んだりぐらいはさせられるだろう。
この研修旅行は、名目は自由参加だが、そこを、とても断れないような雰囲気を作ることに教師の手腕が問われるのだ。参加率のパーセンテージ目標(ノルマ)が担任教師に割り当てられ、もはや教育者でなく悪魔の手先となる。
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ううん、ありそうでこわいですね。
それでも、まずは東電や経産省・原子力ムラの人たちが行くべきだが、彼らは他の原発の再稼働に忙しいので、福島に関わってはいられまい(笑)。
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では、強制ボランティアのやって来る日は近いと?
いや、東電も政府も、福島原発の本当の惨状を、あまり多くの人に知られるのは不都合なのだ。不特定多数よりは、できれば、少数の人だけで行い何とか一般国民に隠し続けたいと思っているはずだ。だからこそ、被曝の累積線量がオーバーした作業員を、名義を換えて再度送り込むようなことを黙認し、そのために下請け闇業者を何層も挟んでいるのである。
だから、できれば強制ボランティアは避けたいとは思っているはずだ。現場の惨状を伝える生き証人が、全国津々浦々に散ってしまうのだから。