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先生、あの時々くる人、変人じゃないですか? 挨拶しても無視するし、話しかけても会話を拒絶してるとしか思えない反応です。
まあ、世の中、変人は多いからな。特に、男は変人が多く、年を取るにつれその割合も増える。そして、寂しい老後を送るのが宿命なのだ。
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女と違って、男が変人なのですか。
そうだ、男は、年を取ると共に、社会的地位や年収、成功の度合いに差が出てくる。そして、ラインから外れた人は、すねて卑屈になるのだ。
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女は違うのですか?
女は、若い頃は、容姿・美貌の度合いに差があるが、年を取るにつれて、みんな一様に醜くなっていき、差が縮まっていくのだ。しまいには容姿などどうでも良くなり、プライドを捨ててみんな仲良くなれる。
男が、社会的地位や年収など、スタートラインが一緒で、年と共に差が出てくるのと対照的なのだ。
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なるほど、そういうことですか。
だから、おばさん同士は、群れて楽しくやっているが、おじさん同士はあまりそういう交流はなく、さみしい老後を送ることになるのだ。一部、寄り合いや社交の場に顔を出すのは、成功者か、元もと気にしない性格の人かどちらかだ。
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じゃあ、中高年の男の人は、変人の割合が多くて、あまり関わりたくないですね。
そんなことはない。この変人こそ、愛すべき存在で、観察の価値があるし、シャイでとてつもなくかわいいではないか。みんな、自分を守るためにやっていることだ。本当にいけ好かない変人もいるが、多くは、か弱い存在の不器用で哀れな変人なのだ。
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そうですか。でも、自分は、変人にはなりたくないものですね。
しかしなぁ、本当は、本当の人生は、変人になってから始まるといっても良い。
順風満帆で、例えば出世街道を歩いている人は、諸々、我慢をし、やりたいことをやらず、やりたくないことをやり、自分を殺して生きていると言っても過言ではない。
そんなことよりも、早くラインから外れて人生を投げて、自分の思うままにおもしろおかしく生きた方が得だし、何より、それが本当の自分なのではないか。
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それはそうかもしれませんが、変人が本当の自分なのですか?